「用心棒」1961年
1961年に公開された日本の時代劇映画。
桑畑三十郎を名乗る浪人が、宿場町で対立するヤクザ同士を衝突させて壊滅させるという物語で、理屈抜きの娯楽映画として興行的に大ヒットし、1962年に続編の『椿三十郎』が作られた。
三船は本作品で第22回ヴェネツィア国際映画祭の男優賞を受賞。
本作品は刀の斬殺音や残酷な描写を取り入れるなど、従来の時代劇映画の形式を覆して後の作品に大きな影響を与え、1964年にはセルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタン『荒野の用心棒』で非公式にリメイクされている。
作品紹介・キャスト
【ストーリー】
からっ風が吹きすさぶ中、一人の風来坊の浪人が、桑畑に囲まれた宿場町・馬目宿へとやってくる。そこは賭場の元締めである馬目の清兵衛一家と、清兵衛の弟分で跡目相続に不満を持って独立した丑寅一家との抗争によって荒廃していた。二人はそれぞれ町の有力者である名主の多左衛門と造酒屋の徳右衛門を後ろ盾にして抗争は泥沼化し、町の産業である絹取引きも中断していた。ふらりと立ち寄った居酒屋の権爺からあらましを聞いた浪人は、酒代として馬目宿を平穏にしてやるという。
浪人は丑寅の子分を挑発して瞬時に三人を斬り倒す。これを見た清兵衛一家は浪人を用心棒として五十両で雇い、祝いの酒席で清兵衛に名前を尋ねられた浪人は窓の外の桑畑を眺め、とっさに桑畑三十郎と名乗る[注釈 1]。凄腕の浪人を手に入れた清兵衛は、一気に抗争の決着を付けるとして総力を挙げて攻め入ろうとするが、清兵衛と女房のおりんが事が済んだら三十郎を始末する算段をしていたことがばれ、三十郎は土壇場で報酬を突き返して足抜けしてしまう。三十郎の狙いは本格的な抗争を起こさせて両勢力を共倒れさせることにあったが、そこに八州廻りが来るとの一報が届き、抗争は中止となってしまう。役人の逗留中は平穏を装い休戦することとなったが、清兵衛と丑寅は互いに大金を積んで三十郎を雇おうとする。
十日後、隣の宿場町で町役人が殺されたとの報が届き、八州廻りは去った。しかし再開するかと思われた抗争はそのまま沈静化してしまう。実は、丑寅の腹心の弟である切れ者の卯之助が帰参し、仲介役となって手打ちの算段を始めたのだった。またもや計画が狂う三十郎であったが、町役人殺しは八州廻りを早く町から追い払いたいと考えた丑寅が仕組んだことと知り、雇われた下手人を捕らえて清兵衛に売りつける。一転して有利となった清兵衛は手打ちを破談にするも、今度は卯之助がその下手人を始末した上で、清兵衛の息子である与一郎を捕まえ再び形勢が逆転する。しかし、清兵衛側も徳右衛門の情婦おぬいを人質にし、丑寅と清兵衛は与一郎とおぬいを人質交換する約定を取り交わす。結果、人質交換は無事に終わるものの、三十郎は、おぬいの正体が、しがない農夫・小平の妻で、徳右衛門と丑寅の企みによって借金のかたにされ、無理やり妾にされたことを知る。三十郎は丑寅の用心棒となって彼らを油断させ、おぬいが囚われた一軒家をひそかに急襲、見張りを皆殺しにして彼女を助け出し、小平に妻子を連れて町から去るように告げる。
おぬいを逃がしたのが清兵衛一家の仕業と考えた丑寅一家は、遂に一線を越えて多左衛門の絹倉庫に火を放ち、清兵衛一家も報復として徳右衛門の酒蔵を襲う。抗争は激化し、町の至るところに死体が転がる惨状となる。一方、気の利かない小平はわざわざ町に戻って来て、三十郎への礼状を権爺に託していた。町をいたずらに混乱させるとして三十郎の策謀に怒っていた権爺は、事情を知って彼に好意的となっていたが、他方で卯之助が真相に気づくきっかけとなってしまう。手紙が証拠となって三十郎は丑寅一家に監禁されてしまい、おぬいの居場所を吐かせるため激しい拷問を受ける。見張りの隙を突いて逃げ出すことに成功した三十郎は、命からがら権爺の店に逃げ込み匿われる。権爺がついた嘘で三十郎が清兵衛に匿われていると思った丑寅一家は、ついに清兵衛の家に火を放ち、燻り出された清兵衛一家を皆殺しにする。
気息奄々だった三十郎は権爺に助けられて町外れのお堂で静養していたが、権爺が握り飯と傷薬を運ぶ途中で丑寅一家に捕まったと棺桶屋から知らされる。三十郎は権爺が護身用にとくれた包丁と棺桶屋が用意した刀を持ち、権爺を助けるために再び町へ戻る。白昼の町辻で三十郎と丑寅一家が対峙する。短銃を構えた卯之助に対して、三十郎は彼の腕に包丁を投げつけて銃を封じ、瞬く間に丑寅一家を次々と斬り倒し、郊外の農家を飛び出して丑寅一家に加わっていた若者一人を見逃す。倒れた卯之助は弾切れになった短銃を持たせて欲しいと三十郎に乞い、実はまだ弾薬が残っている銃口を彼に向けるが、引き金を引く寸前に力尽きて絶命する。三十郎は権爺を縛っていた縄を斬り、「あばよ」と声をかけて平穏を取り戻した町を去ってゆく。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
【キャスト】
監督:中平康 、原作:石坂洋次郎、脚本:池田一朗/中平康
出演:三船敏郎、仲代達矢、司葉子、山田五十鈴、加東大介、河津清三郎、志村喬、夏木陽介、ほか